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最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)2696号 判決

主文

本件再上告を棄却する。

理由

弁護人沢田健男の上告趣意について。

重要物資在庫緊急調査令が、「昭和二〇年勅令第五四二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件」に基いて制定されたことを明示しないで通常の政令と同一の方式で、昭和二三年三月二七日の官報号外により、政令第六五号として公布されたことは、所論のとおりである。(ただし、その後昭和二三年四月一六日に至り官報の正誤表をもって右政令の公布書中「重要物資在庫緊急調査令」の上に「昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く」を加えるべきの誤りであったと正誤されている。)ところで、罰則を設けた政令を公布するに当ってその根拠を示さなかったとしても、それだけでは直ちにその政令を無効であるとすることはできない。その効力如何は、罰則を設けることができる実質上の根拠があったかどうかによるのである。さて、本件政令第六五号は、わが国における経済復興を促進するにあたって国内資源の最も有効な活用に資するため、重要資材の一切につき、その包括的在庫品目録を作成するために必要な諸処置をとるべきことを、日本政府に対して指令した一九四八年二月二一日附の聯合国最高司令官の重要物資の在庫目録に関する覚書に示された事項を実施するため、特に必要あるものとして昭和二〇年勅令第五四二号に基き制定されたものであることは、明らかである。されば、本件政令第六五号は、その実質において「昭和二〇年勅令第五四二号ポツダム宣言の受諾に伴い発令する命令に関する件」に基くものであるから、これに必要な罰則を設けることはもとより為しうるところである。それゆえ、右政令を有効であると判断した原判決には所論のような違法はない。なお、論旨末段においては原審に提出された上告趣意書の記載を本件再上告趣意として援用しているが、このような援用は許されないのであるから、この点については別に説明を与えない。

よって、本件再上告を理由ないものと認め、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 井上 登 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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